インドに行くと人と人との距離が近いことにいつも気づかされますが、この夏もやはりそうでした。
リシケシでは、ガンジス川で沐浴しながら多くの人から「どこから来たの」と親しみを込めて聞かれました。私も聞き返すと、グジャラートやら、ラジャスターンやら、デリーやら、一見しただけではインド人としかわからないのですが、様々な地域から観光客が訪れていることがわかります。
ガートに腰を下ろしていると、若い女性が隣にぴったりくっついて座り、一緒に写ろうとスマホを向けられ写真に収まったり、私自身がガンガー(ガンジス川)を背景に自撮りしようとしていたら、女性が「撮ってあげる!」と走り寄ってくれたりしました。
過去には沐浴の仕方を教えてくれたり、ガンガーの水をボトルに汲もうとしていたら、「こうするといいよ」と教えてくれたり、その場に居合わせた人々から様々な親切を受けてきました。もっとも私には親切に感じられたというだけで、彼らにとっては当たり前のことだと思うのですが。
恥を忍んでお伝えしますと、インドに長期滞在するために最初に訪れたムンバイで、イタリア系の一人暮らしの女性のお宅に間借りした時のことです。まだ若いころのことです。ある日、彼女の友人が訪れ、二人の会話の中で、「彼女(私のことです)は悪い人ではない」というフレーズを耳にしました。悪い人ではないというのは、人を騙したり、盗みを働いたりする人ではないという意味だと思います。彼らは、人を助けたり手伝ったり親切にしたり、人の役に立つことを率先して行う人をいい人と言うようです。悪いことをしないだけで、特段良いこともしない人は、悪い人ではないという範疇になるようでした。
最後に、生活に困っていた友人を助けるため職探しに東奔西走したインドの知人の言葉を紹介したいと思います。彼のおかげでその友人は職を得て安定した生活ができるようになったのですが、彼が私に言った「人に親切にすることを母から教えられた」という言葉が今でも心に残っています。